〈Note 57-5〉住まいの「動線」「視・聴・嗅 動線」とは?

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57-5 住まいの動線 視聴嗅動線とは?

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「視」「聴」「嗅」への意識

 住まいには、住んでからでないと気が付きにくい不都合な要素がたくさん存在しています。

 特に、「人の五感」に関わる不都合は、体感として顕著に現れるので、机上計画の段階での検討が重要なポイントになることは言わずと知れたことであるはずです。

住まいの「動線」・ノート一覧
57-1 住まいの長持ちは「動線」で決まる?!
57-2 住住まいの「動線」検討は「知覚価値」を高める起源
57-3-1 住まいの「動線」 分類と解釈
57-3-2 住まいの「動線」「生活動線」は動線の総称
57-3-3 住まいの「動線」 「家事動線」は特別な動線
57-3-4 住まいの「動線」 「来客動線」は特別な動線
57-4 住まいの「動線」「作業動線」とは?
57-5 住まいの「動線」「視聴嗅動線」とは?
57-6 住まいの「動線」 動線の「次元性」とは?


 しかし、住まい選びや設計の場面で一般的に行われている間取りや動線の検討は、性能や仕様などの数値に依存した机上論に偏っていて、高額かつ末永く付き合わざるを得ない代物の如何を決めるに、相応しいとは言い難い行程なのです。
 特に、「見え方」や音の「聞こえ方」「におい方」といった、数値化されにくい要素の検討は置き去りにされがちで、その評価は良くも悪くも結果に委ねられているのが実情です。

 住まいの動線に照らし合わせて言い換えれば、距離や位置的な要素ばかりを重んじた動線の住まいには、実際に住み始めてから得られる結果である「見え方(視覚)」、「聞こえ方(聴覚)」、「臭い方(嗅覚)」による影響は「想定外」として捉えられ、それがポジティブな事象であったとしても「当たり・はずれ」や、「結果オーライ」などと形容されることが多いのです。

 この「想定外」が当事者にとって良い事象であろうと悪い事象であろうと、住まいの設計や住まい選びの時に、「視(し)」「聴(ちょう)」「嗅(きゅう)」の要素を意識し、度合などを想像し捉え得る機会があったとするならば、「想定外」は「想定内」として認識され、実際に住み始めてからの不満や不安を感じる状態に至らせにくくするはずです。

 むしろ、想定内の「視聴嗅」動線が満足感を増させむしろ多少の不合理があっても、想定していた通りの「視聴嗅」の動線を持った住まいでは、満足感さえ得られるのです。
 

「視聴嗅動線」の検討は「スチュエーションの想像を愉しむこと 」です。

 「視聴嗅」の動線を想像するにあたり注意するべき思考の要点は、パブリックエリアは時としてプライベートエリアに、プライベートエリアはパブリックエリアに変わる場合がある、ということです。

 そのうえで、パブリックエリアであろうとプライベートエリアであろうと、そのエリアを「何時、誰が、どの様に、どの程度通行する可能性があるのか」、多くの当事者の立場による「視聴嗅」のスチュエーションの想像で見えてくる動線が、検討するべき動線となります。

 このスチュエーションの想像で得たいのは、自己思考による検討経緯です。

 自己の思考を以て想像し検討した経緯やその記憶が、動線の評価を高めずとも肯定に繋げるのです。動線の正誤を追及し、失敗の無い住まいにしようと辛労辛苦するよりも、創造過程を愉しむことの方が重要なのです。

「視聴嗅動線」検討の焦点は「人と人との線引き」を考えることです。

 特に、パブリックとプライベートの繋がりがあるエリアでの「視聴嗅」の動線の構築には、単なる動線の距離や位置的な関係、種類だけではなく、当事者の見()え方や「見()られ方」、聞()こえ方や「聞()かれ方」、匂()い方や「匂()われ方」を想像し、「プライベートとパブリックの線引きの位置」が焦点となることへの意識が必要です。

 この「プライベートとパブリックの線引きの位置」とは、住まいというモノに対する線引きの位置のことよりも、人と人との関係における「ヒトとの線引きの位置」の意味合いの方が強く、人それぞれが持ち合わせている常識や性格や習慣によって、異なる意識に潜在する線引きの位置のことです。

 現に持ち合わせている潜在意識を含むので、「住まいは人を育て、人の性格にも寄与する」と解するうえではなおのこと、この潜在意識を見直し、「ヒトとの線引きの位置」をどこにするかを家族間で考えることが重視されます。

 言い換えると、「視聴嗅」の動線構築には、住む人各々の潜在意識を変えることが必要となる場合があるということです。

 もう少し具体的に言うならば、殆どの人が持ち合わせている人との線引きの潜在意識は、来訪者などの家族以外の人を相手とした意識だけではなく、家族同士の間柄にもおよぶので、家主を中心にその潜在意識を確認し合い、「次元性」(成長や加齢などによる将来性)の考慮を以って検討する「視聴嗅動線」に意義があるのです。

 

 (ヒトとの線引きの位置)あなたの「来訪者」との線引きの位置は?「次元性」は?
 
 下の図は、来訪者等家族以外の人との線引きを具体例として表にしたものです。


あなたの潜在意識にある線引きの位置はどこですか?

 この表による例では、受け入れ難い相手「排他者」になるほど上に、受け入れ易い(受け入れるべき)相手(協調者)になるほど下に記載しています。

 次に下の図は、「来訪者」の移動範囲のステージ(家主から視た段階的対峙)の例を表にしたものです。


 あなたが考える「来訪者」毎の移動範囲のステージは?

 この表による例では、受け入れ難い相手「排他者」になるほど上に、受け入れ易い(受け入れるべき)相手(協調者)になるほど下に、「会話」「気づかい」「もてなし」の有無による親密度を1~6段階で表ししています。臨時の訪問販売や提携相手を除き、親密度が6に近い程滞在時間が長く、対峙場所がプライベートエリアに近寄ります。

 この2つの表が示す様に、「来訪者」の要素が他人から親族に至り、排他的対峙を選んだり協調的対峙を要したりすることを住まいを考える誰もが少しくらいは想像していると思います。

 しかし、動線考慮の度合いとしては、当事者の考え方や時と場合によって様々です。例え家族の間柄であったとしても、プライベートとパブリックの線引きはそれぞれで異なります。

 つまりそれは、貴方にとってのパブリックは家族の誰かにとってのプライベートである場合がある事に対して思考を及ばせることが必要だということです。

 そのうえで、家族内でのプライベートとパブリックの線引きは、成長や加齢に応じて変化する「次元性」が求められるということを動線の構築要素として捉える必要もあるのです。

 「次元性」を以て「人と人との線引き」を考えるという創造過程をも愉しむことが、「視聴嗅動線」の検討なのです。

動線の「次元性」についてはコチラをクリック→ 57-6 住まいの「動線」 動線の「次元性」とは?

 

 「視聴嗅動線ってどんな動線」

 では次に、視聴嗅動線の要素について説明します。

 住まいでの体感として、顕著に現れる「人の五感」に関わる動線の不都合のうち、机上計画の段階での検討が重要となるポイントは、視覚的動線:「見え方」、聴覚的動線:「聞こえ方」、嗅覚的動線:「臭い(匂い)方」の3つです。

 (視覚的動線)
 視覚的動線の検討は、否が応でも目に入る様な視角的現象や、テレビの画面や時計、カレンダー、絵画など、いわば凝視する現象を考慮することを指します。ポジティブに「見える」と解釈されることだけではなく、「見えない」「見られてしまう」といったネガティブな観点を含む、人の視覚に関わる動線考慮です。視覚は聴覚を補う関係にあるので、住まいの動線においては、聴覚の動線との同期的考慮が望ましい現象が多く存在しています。

 (聴覚的動線)
 聴覚的動線の検討も同様に、否が応でも耳に入る様な物理的現象や、テレビやオーディオの音声、インターフォン、電話、洗濯機などの呼び鈴や通話といった諦聴(ていちょう)に値する現象を考慮することを指します。ポジティブに「聞きたい」音のことのみならず、時として「聞きたくない」「聞かれたくない」といったネガティブな観点を含む、人の聴覚に関わる動線考慮です。聴覚は、視覚を補う関係にあるので、住まいの動線検討においても、視覚の動線との同期的考慮が望ましい現象が多く存在しています。

 (嗅覚的動線)
 嗅覚的動線の検討は、否が応でも匂う(臭う)様な自然的現象や、消臭や芳香を目的とする様な匂い(臭い)を聞香(もんこう)したり、されたりする際の現象を考慮することを指します。ポジティブな「匂い(臭い)」のことのみならず、時として「嗅ぎたくない」「嗅がれたくない」といったネガティブな観点を含む、人の嗅覚に関わる動線考慮です。住まいの視聴嗅動線の検討においては、匂い(臭い)の発生元との位置関係だけではなく、換気や対流などによる内気の流れ方を考慮することに値します。
 ※問香(もんこう):香りをかぎわけること。ぶんこう。

 
 

 「階段の位置で変化する『視聴嗅動線』」

 「次元性」を以て「人と人との線引き」を考えるという創造過程をも愉しむことが「視聴嗅動線」検討の意義であることと、「視聴嗅動線」の要素についてをお話ししました。
 ここでは、具体的に例を挙げて「視聴嗅動線」の考え方について解説したいと思います。

 「視聴嗅動線」に関わらず、住まいの動線検討場面において、最もその違いを得られるのが「階段の位置」です。
 階段がプライベートゾーンに属するのか、パブリックゾーンに属するのか、またその度合いによって生じる「視聴嗅動線」の違いを考慮することは、「次元性(成長と加齢と持続性)」を以って「人と人との線引き」を考えるという想像過程を愉しむことに値します。
 
 二階建てが主流化している昨今の住宅事情では、個室が存在するプライベートゾーン(プライベートエリア)への入り口となる階段を玄関から直行できる位置にはせずに、リビングやダイニング、キッチンを経由する位置に置き、家族のコミュニケーションを重視した間取りが多く散見されるようになりました。
 この様なリビングを経由する位置の階段を「リビングイン階段」と呼んだり、文字通り「リビング階段」や「リビング内階段」と略して表現されたりするほど重宝されている様です。(下記に「リビングイン階段」が重宝されている理由をまとめました。ご参考ください。)しかし、一方では、こういった位置の階段にしたことを後悔するケースが散見されているのも実情で、これを第三者目線で評価するならば、検討不足と言えるのでしょう。「次元性」を以って「人と人との線引き」を考えるという想像過程を愉しむことは、住まいを求める方にとって必然なことではないでしょうか。
 
 「リビングイン階段が重宝されている理由」
 1,社会的問題
  ①ひきこもり防止策
  ②共働きによる家族のコミュニケーション低下防止(子供の非行防止)
  ③少子化(一人っ子)による①②の影響懸念
 2.家の狭小化 
  応接室や客間離れ→LDK一体型(リビング・ダイニング・キッチンが一つの大空間:欧米型)の浸透
  コスト低減への選択
  ③廊下が減り主にリビングなどの居室面積を広くできる(おしゃれな階段にできる)
 3.標準的家屋の断熱性向上
  ①吹抜状となる階段での熱損失懸念が減った
  ②断熱性の向上が、上記1.社会的問題と2.家の狭小化への対策として合理的理由となった

上記を踏まえ、「リビングイン階段」の間取り例を紹介します。

  プラン例-1-A.玄関から直行しない個室へ繋がる階段の昇降口。客間の無いプラン。

  プラン例-1-B.玄関から直行しない個室へ繋がる階段の昇降口。客間のあるプラン。

特徴:プラン例1-Aでは、当事者(来訪者を接待する家族)以外の家族が来訪者と面する確率は高いが、プラン例1-Bの様に間仕切り壁を追加し客間を備えれば、当事者以外の家族が来訪者と面する確率は低くなる。

  プラン例-2-A.玄関から直行しない個室へ繋がる階段の昇降口。和室やリビングを客間に利用可能。

  プラン例-2-B.玄関から直行する個室へ繋がる階段の昇降口。和室やリビングを客間に利用可能。

  特徴:プラン例-2-Aから、プラン例-2-Bへの変更が、間仕切り壁の追加で可能。プラン例-2-Bの場合、玄関から個室へ繋がる階段の昇降口は直行する。
 

  プラン例-3.玄関から直行しない個室へ繋がる階段の昇降口。リビングイン階段。

特徴:リビングイン階段が望ましい。

 ●「トイレの位置や動線はどう考える?」

  1.扉が玄関ホール面し配置されるトイレ

  現象:・パブリック要素の高いリビングから隔離される。
 ・玄関に来訪者がいる場合、当事者以外の家族がトイレ出入り時に来訪者と面する確率が高い。

  2.キッチンとの距離が近いトイレ

  現象:・廊下が減るので動線が短くなる。土地の狭い家では有効。
 ・子どもの幼少期にはトイレの世話などで移動がしやすい。
 ・ドア1枚のみで隔てるのでキッチンに匂いや音が伝わりやすい。
 ・キッチンでは炊事の匂いと入り混じる可能性。
 ・来客時にキッチンが見えてしまう。
 ・来客も音や匂いを気にすることから別のトイレを案内することに。

住まいの「動線」・ノート一覧
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57-2 住住まいの「動線」検討は「知覚価値」を高める起源
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