〈Note 57-3-2〉住まいの「動線」 「生活動線」は「動線」の総称

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57-3-2 住まいの「動線」「生活動線」は 動線の総称

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「生活動線」は「動線」の総称

 一般論での住まいの「動線」は、「家事動線」と「来客動線」と「生活動線」の三つに大別され、それぞれが独立した質の下にあるように解されています。

 しかし、家事や来客は住まいでの「生活」の一部であって、これに伴う「動線」は、住まいでの活動に一環する「動線」ですから、住まいにある「動線」全てが「生活動線」であると解釈する方が素直です。

住まいの「動線」・ノート一覧
57-1 住まいの長持ちは「動線」で決まる?!
57-2 住住まいの「動線」検討は「知覚価値」を高める起源
57-3-1 住まいの「動線」 分類と解釈
57-3-2 住まいの「動線」「生活動線」は動線の総称
57-3-3 住まいの「動線」 「家事動線」は特別な動線
57-3-4 住まいの「動線」 「来客動線」は特別な動線
57-4 住まいの「動線」「作業動線」とは?
57-5 住まいの「動線」「視聴嗅動線」とは?
57-6 住まいの「動線」 動線の「次元性」とは?

 

 「家事」や「来客」に関わる「生活」は、他の住まいでの活動とは質が異なり、且つそれぞれの「動線」は交差や重なりが避けきれない相対関係にあります。

 それが故に、不都合の解消策となる合理性を求める行為が必要とされるので、「家事動線」と「来客動線」の意識付けを目的として、「生活動線」から分離した解釈を促していると考える方がスマートです。

 端的に言えば、住まいでの生活に要す「動線」の全体が「生活動線」で、その中に特出し注視すべき「家事動線」と「来客動線」が潜在しているという概念です。

 さらに「動線」検討において、本質として捉えて置くべきは、「動線」の全ては経路を移動する者である「自動者」と、その周りに居て「自動者」の移動を避けたり受け入れたりする「受動者」の立場で考慮する必要があると解釈をするべきです。

 末永く住まえる家を期待するうえで、住まいの「動線」は「自動者」と「受動者」の双方の立場での考慮が肝要ということです。

 ですから、「動線」を考える際には、「自動者」と「受動者」双方の立場の想像によって、優先度合を決めれば良いのです。

 この優先度合の検討が、「動線」の考慮であり、住まいや家族各々で取り決める「動線」利用に関わる生活の規則や慣習といったルールづくりでもあるのです。

 敷地の狭小化が住まいの短命化を生み出していると評価できる現代では、「動線」利用にかかわる生活の規則や用法、慣習といったルール検討によって、住まいの「使い勝手」が良い方向に維持されると捉える意識が肝要なのです。

 ⇒挿絵 動線の総称生活動線
 



動線の根本と考え方

 一般的な解説や理論では、家族の日常生活において、部屋や区画などの場所での目的を果たすための移動に要す経路が「生活動線」とされ、「家事動線」や「来客動線」とは区別された解釈がなされていますが、「動線」の分類と解釈の解説でも述べている様に、本質的には住まいでの生活全般に関わる「動線」が「生活動線」であると捉えるべきで、ここでの解説や理論の基本となります。

 住まいの「動線」を考える目的は、端的には満足のできる家にすることではありますが、最大の目的は、住まいの購入や建築を考える人が、その家に対して持ち続けるべき「知覚価値」を高めることにあります。

 そのうえで、家の「知覚価値」を高めたい場合には、「距離」を核とした動線の「形状」や動線の「移動」、動線の「重なり」が、家の「使い勝手」という「質」への評価に影響するという基本的概念を認識しておくべきでしょう。

 「動線」検討による「使い勝手」という「質」への評価の影響とは、「動線」経路の物理的「形状」が、「時間」と「速さ」といった人の精神的感情へ連鎖する原理のことであり、その経路を「移動」するヒトやモノとの「干渉」や「交差」といった「重なり」によって変化する、物理的現象や精神的感情が家を求める人にとって、どのようなものであるのかをこの原理と共に想像し、確認する行為が「動線」検討なのです。

 この「動線」の「重なり」とは、端的にはヒトとヒトやモノとヒトとの「干渉」や「交差」といった物理的現象や、これによる精神的感情のことですので、視覚(見えてしまう)、聴覚(聞こえてしまう)、嗅覚(におってしまう)などの人が持つ五感要素にもおよぶことに意識を要します。

 「動線」検討は、ヒトの精神的感情に関わる行為ですから、その住まいの目的が家事や来客に拘ったものとされない限りは、家事や来客などの事象に翻弄されず、移動するヒトである「自動者」と、それを受け入れるヒトである「受動者」双方の立場を以って、偏りなく考慮する柔軟な思考を意識することが賢明です。

 さらに忘れてはならないのは、時の経過とともに必ず起こる、住む人の成長や成熟、老化といった要素に対する考慮です。
 
 ヒトの変化は不可避ですので、動線」の長期的将来の視点という意味である「次元性」の検討も望まれるのです。

 
 住まいの「動線」考慮において、これまで解説の理論を以って総合的な判断を行おうとするのならば、相応な時間を要すことは否めないでしょう。

 しかしその一方では、「動線」検討に要した時間は、思考を巡らせた人にとっては、生涯記憶に残る時間ともなるでしょう。

末永く住まいたい納得の住まいの構築において「動線」の熟考に要す時間は、知識の習得や家への愛着起源となるばかりではなく、損なうことのない「知覚的価値」を高めるための手を抜く理由のない、当然の時間と言えるのです。
しかしながら、「家事動線」や「来客動線」との「干渉」や「交差」のみならず、他の「生活動線」との拮抗も必ず想定されるのが「動線」です。

物理的「形状」によらず、用法やルールといった精神的感情によって決まる「動線」は多々あります。

それが故に、住まいでの生活全般に関わる「動線」が「生活動線」であるという解釈が生じるのです。

「動線」に正しい答えは存在しません。

自らの「知覚価値」を見出すことが「動線」の答えです。

「動線」検討は、その熟考の時間によって高められる「知覚価値」のことなのです。
 

 

動線は距離が質に影響する

 住まいの「動線」を「自動者」と「受動者」双方の立場を以って想像するという根本を押さえたうえで、先ず認識しておくべきことは、移動経路の「距離」という「質」が、「時間」という「質」に影響し、「時間」という「質」が、「速さ」という「質」に影響するという連鎖の原理が「動線」にはあるということです。

 「速さ」を求めるような「動線」では、「安全」や「効率」を伴った上で、「目的の成果」である「質」の考慮にも意識が及ぶはずなので、移動経路の「距離」が「動線」の良し悪しを決めるとも言えるのです。

 例えば、食器棚からの食器の出し入れ行為は、食器棚の場所によっては、移動を伴わない作業として考えられますが、その距離が離れていると移動を伴うことになり、「動線」の「目的の成果」である「質」が変わってくるのです。

 つまり、移動距離が短ければ作業としての「動線」構築で済みますが、移動距離が長ければ移動と作業を伴う「動線」としての考慮が必要になるということです。

 この「距離」と「時間」と「速さ」の連鎖を意識するならば、単に「動線」と言うよりは、作業による「作業動線」と移動を伴う「移動動線」に分類し考慮するべきなのかもしれません。

 ⇒挿絵 動線の距離と時間と速さの関係
 

 

 

動線は「経路」「移動」「重なり」の三つの視点で考える

 住まいでの生活全般に関わる「動線(生活動線)」の考慮という行為は、「合理性」(効率や安全性)の度合を確認することが第一の目的です。

 住まいに対して抱く、夢や希望に対する「合理性」の確認行為にもなるので、重要な位置付けと言えます。

 間取り図や設計図、実際の建物などの確認だけでは見落としがちな「動線」の要素を「経路」「移動」「重なり」という三つの視点で捉えることで、見落としの軽減に繋がります。
 ⇒挿絵 「動線」検討の三つの視点
 


 

①「経路」
 「動線」考慮における「経路」とは、言わばヒトが通る「道すじ」のことです。
 この「道すじ」の空間サイズや、家具などを配置した際のスペースを考慮する視点です。
 「経路」は、その距離が短いほど移動時間が短くなり、効率が良い方に評価されやすいのですが、幅や高さ、段差や明暗など、他の「経路」の要素の他、次にも掲げる「移動」と「重なり」の要素に影響する場合があります。

②「移動」
 「移動」の視点は、ヒトやモノの移動行為への視点のことです。
 単なるヒトの移動だけではなく、ヒトがモノを持って移動したり運搬したりする行為への考慮を促します。
 ヒトやモノの様態や容姿による「移動(運搬)」行為の違いを考慮することで、「経路」や「重なり」の要素への影響が確認できます。

③「重なり」
 ヒトやモノが「移動」する「動線」には、その「経路」の「道すじ」そのものや、行為のタイミングにより「移動」の「重なり」が生じ得ます。
 コンパクト化された住まいでは、この「重なり」が特に問題点と成り得る要素です。
 「動線」の「重なり」の考慮は、その「経路」と「移動」の視点による考慮と共に、回避度合を探ることになるわけですので、効率や安全性への「合理的」な決断がなされないかぎり、「経路」「移動」「重なり」の視点による検討が繰り返されるわけです。

 一方では、「経路」「移動」「重なり」の視点による「動線」検討が繰り返されるなかで、「動線」利用のタイミングや「動線」利用の「ルール」化などの考慮によって、回避方向に向かわせることができるという考え方を持つことも要点です。

 大抵の「動線」の「重なり」は、利用のタイミング調整やルール化などの考慮によって回避できる場合が多く、「動線」の「自動者」と「受動者」の立場を以って考慮すればなお、後々の後悔が生じにくくなるものです。

キッチンの「動線」と「重なり」
 例えば、人が近接し易いキッチンで調理をする人と、その直ぐ後ろなどで冷蔵庫や食器棚の扉や引き出しを開閉する人との間に生じる「動線」の「重なり」は、効率だけではなく安全面からも、各々の相手方の「動線」の阻害度合が意識されます。

 この様な場合の「経路」や「移動」へは、キッチンは火や刃物を使用する場であり、且つ炊事という行為には効率が求められる要素であるが故に、調理する人を「自動者」として重んじる「動線」考慮がなされがちですが、冷蔵庫や食器棚の扉を開け閉めをする調理中以外の人を「自動者」とする「動線」を重んじる視点も必要です。

 キッチンの「動線」であっても、調理する人を「受動者」とし、単に冷蔵庫の飲み物を取出しにだけキッチンに入ってきた人を「自動者」として視るということです。

 調理する人の立場であっても、冷蔵庫の扉を開け閉めする人の「動線」を「受動者」の立場で捉え、冷蔵庫の配置をキッチン入り口付近の誰もが行き来しやすい位置にすれば、調理する人からすれば、冷蔵庫までの「経路」が多少遠くなったとしても、火や刃物を使い調理する人と冷蔵庫の扉を開け閉めする人との干渉は減るでしょう。

ベランダと個室の「動線」の関係
 洗濯物や布団を干すなどで、ベランダやバルコニーへ出入りする際、個室を通るような間取りの場合、洗濯物を干す人と個室に居る人との間では、交差や干渉といった「動線」の「重なり」が生じます。

 個室に居る人のプライバシーを重んじるのならば、個室をベランダへの「経路」としない、直接アクセスできる他のパブリックスペース(廊下等の共用スペース)などからの「経路」の確保が望まれれますが、布団干しなどを含む比較的重労働となる家事として、その効率や安全性を重んじるのならば、出入り口の扉形状や開口幅、段差、高さなどの条件も判断基準となることかと思います。

インターフォンや電話、給湯器リモコンの位置
 インターフォンや電話の位置は、利用する人「自動者」とその周りに居る人「受動者」の立場での考慮が必要です。

 インターフォンや電話は、呼び出しに応じやすい位置に設置することだけではなく、その目的が機器を通じて行う外の人と会話にあるので、機器の音と室内で生じる音との干渉となる「重なり」にも意識が必要と言えます。

 最近は、子機付きのハンディフォンや、移動式子機が増やせるモニター付きのインターフォンが普及していますので、機器による「動線」の「重なり」回避は容易と言えますが、ファックスやスキャナー、印刷機能の付いた家庭用電話機の利用を希望する場合などは、親機となる機器の設置場所の検討は、その操作をする際の他の「自動者」との「動線」の「重なり」への考慮が必要となります。

 一般的な給湯器のリモコンは、浴室内とは別に1ヶ所設けられる機器が主流化しています。浴室内のリモコンの位置は、浴槽に浸かりながらの追炊き操作の他、洗面所からの電源や温度設定が容易となる位置考慮すると、利用効率の良いリモコンになります。


浴室内のリモコンを浴室戸の傍に設置すれば、濡れた浴室内に足を踏み入れなくても、洗面所からの操作できるのです。

ドアの形状と開閉方向
 住まいでの各部屋の出入口や、収納などの目隠しとなるドアや扉の形状や開き方向には、選び方があります。

 「動線」の「経路」「移動」「重なり」を考慮した選び方です。

 ⇒挿絵 ドアや扉の選び方

 

 

 

運搬に関わる「動線」

 「生活動線」の中でも、物の運搬や移動を目的とした「動線」への意識は抜けがちで、住まいの購入や建築を行う序盤での検討が望まれます。

 一般的な解説や理論ではあまり触れられていない「動線」です。

 物はその容姿によって、移動の難易度が異なる要素があります。

 家具や大型家電の搬入出や移動は、毎日のことではないでしょうけれども、移動が必要となった際には、その容姿が故の「動線」確保が必要となり、「生活動線」の考慮の中でも特別に意識し考慮する必要があると言えます。

 容姿が大きいモノは、一定の場所に据え置くことが常ではありますが、家中での移動が無いとは言えず、特に家電などの場合は、将来的な入れ換えによる移動を行う時期が必ず到来するので、その搬入や移動の「経路」の中でもサイズ的な要素である「幅、高さ、段差」などの経路の「形状」を事前に確認する行為が必要となるのです。

 逆に、食器や衣類のような一単位が小さく軽いモノの場合、運びやすい容姿であるが故に、その移動は容易な部類として安易に考えられがちですが、移動回数が多くなる傾向にあるので、「経路」の中でも「距離」に着目する必要があると言えます。

 容姿が大きいモノは、「経路の形状」、小さいモノは、「経路の距離」を意識する「動線」検討が望まれるのです。

 容姿の大小によらず、モノの運搬や移動の検討には、そのモノを運ぶ際の手法が関わります。

 その手法と「経路」との関係を事前に考えて置くことが「動線」検討となり、モノの運搬や移動の難に気が付くタイミングを早めることが目的なのです。

 ⇒挿絵 モノの運搬と頻度
 

 


 

「動線」検討に行き詰まったら

 100点満点の「動線」が構築出来ることは稀な事です。

 「動線」考慮の目的が、考えるという行為そのことにあります。

 どんなに納得の行く「動線」が構築できたとしても、いずれ少しくらいのマイナスは生じるはずだということです。

 そのうえでは、住まいでの生活の軸となる「生活動線」の考慮に最も重要視されるのは、「動線」運用の「ルール化」です。

 生活のルールでもあります。

 机上での「動線」構築が上手く行かなかったとしても、「動線」の熟考と並行して行うルールの熟考が、不足する「経路」「移動」「重なり」といった「動線」要素をカバーするのです。

 「動線」の構築には、運用ルールの熟考が最も必要だと言っても過言ではないのです。
 ⇒挿絵


 

人が近接し易いキッチンの「ルール化」による回避例

 食器棚と調理する人との間に人が通行できるくらいの一定の距離(経路)を確保しても、人の干渉が懸念される場合には、調理する人が手を休めたり、声を掛け合ったり、効率や安全性への理解が乏しい小さな子供さんが居るような場合には、調理中のキッチンには入室をさせないなど、「ルール」の構築によって「合理性」が得られる場合があります。

 一見すると「経路」が短く、効率的なキッチンであると視えても、火や刃物を扱う場所であるが故に「動線」の「重なり」が、ほんの一瞬のことであっても、重大な損傷や損害に繋がってしまう場合があるので、意識を高く持つことをお薦めします。

 火のそばでの「動線」の「重なり」が原因で、衣類への引火や、油や熱湯を被って大やけどを負ってしまった例や、火災の事例も多くありますので、キッチンの「動線」の「ルール化」は肝要なのです。

 

住まいの「動線」・ノート一覧
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